チリワインの歴史と概要 ワインのニューワールド代表の一つチリでは、今から450年の前の1556年に、当地で栽培されたワイン用ブドウから作られた、 最初のワインが確認されています。 スペインによる南米各地の植民地化にはカトリック教の宣教活動が重要であったため、 宣教師たちは南米の太平洋沿岸側を南下しながら活動を行いました。 そして、教会の礼拝に必要なワインを作るために、ブドウの木もチリに持ち込まれ、これがチリの気候や土壌と良くマッチし 栽培が広がりました。 ニューワールドと呼ばれるヨーロッパ以外のワイン生産国の中では、実はチリは最も古くからワインが作られている国なのです。 南北に細長いチリの国土のほぼ中央に広がるセントラル・ヴァレーと呼ばれる地域一帯は、 地中海性気候に属しています。四季のはっきりした温暖な気候で、特に、降水量の極めて少ない乾燥した長い夏が特徴です。 また、豊富な日照量に恵まれるとともに、昼夜の気温差が時には20度近くと非常に大きいことも重要な特質と言えるでしょう。 チリの国土の長さは4200kmに及び、その長い国土に広がるワイン生産地は南北では1000km以上にも伸びています。 そして、ワイン生産に影響するチリの地方性は大きく次の4種類に分かれます。北部(アタカマ砂漠近郊)と南部(パタゴニア)、 そして、東部(アンデス山脈側)、西側(海岸側)です。 なお、この南北の距離”1000km”は、カリフォルニア南部のワイン生産地 セントラルコースから、北部オレゴンワインの生産地ポートランドに相当する距離であり、イタリアでいうと北部のピエモンテから シチリア島までの距離に相当します。 ワイン作りにとって重要なのは、ブドウの収穫期前後に降雨がほとんどないことで、 細菌の繁殖によってブドウが傷む心配がほとんどなく、糖度の高い良質なブドウを得ることができるという点です。 また、ふんだんな太陽光の下、気温変化の大きい夏場に成熟していくブドウには色と香りが凝縮され、ボディのしっかりした、 かつ果実味のあるワインを生み出すことが可能です。 チリの主なブドウ品種 黒ブドウ品種 シラー カベルネに並ぶ長熟ワインになるセパージュ。カベルネのような荒々しい渋いタンニンではなく、丸みあるタンニンが特徴。 カベルネ・ソービニョン 赤ワイン用セパージュの王様で高級品種。がっちりかつマッチョ。筋肉質であるため年を追って、柔らかでスマートかつエレガントに 熟成していくものも多い。チリ全土で栽培され、プレミアムチリワインに欠かせない存在。各地方のヴァラエタルカベルネを飲み比べれば、 地方の特徴を感じられる。テロワールを比較的上手に表現してくれる品種。 カルメネール フレッシュで若々しいときもあれば、 完熟してチョコレート、ジャムのようにこってりしたものになることも。キメの細かいスムーズなタンニンをもっています。 チリの代名詞的な品種にしようとする活動が盛ん。原産地だったボルドーではほとんど栽培されなくなった品種。 カルムネールとも。 メルロ カベルネにまもられる気の優しい妹さんのような品種。チリの赤ワインの15%がメルロであり、 アッサンブラーヘにカベルネと一緒に使われていることも多い。ワインにスムーズで芳醇な女性的な魅力を与えるとされている。 栽培や醸造時においても、カベルネよりもずっと丁寧な扱いが必要。赤いフルーツを連想させられる、 渋みの少ない飲みやすい万人向けの品種。 ピノ・ノワール もっとも繊細で、上品な高級品種。取り扱いが難しく、 複雑でエロティックな女性的なワイン。チリの場合は若々しいものが多い。細かく複雑な香りをもち、奥が深く、 世界中にピノ・ノワール信者は多い。チリでは赤ワインとスパークリングに。 白ブドウ系品種 シャルドネ 造り方、 栽培方法によっていろいろな性格に化けやすい品種。 突出して、個性的な特徴を持っているわけではないため、 造り手の意図、産地の特性というものを表現しやすい。カベルネ同様、チリ各地のヴァラエタルのシャルドネを呑み比べることによって、 産地の特徴を見つけやすい。チリの白ワインで、樽熟成されたゴージャスなものになるのはほとんどこの品種。 世界的にもっとも人気の白ワイン品種であり、白のスタンダード的存在。 ソービニョン・ブラン 白ワインの30%がソービニョン・ブラン。 チリのフレッシュなソービニョン・ブランは長熟に適してはいないが、造りたては格別にクリスピーで溌剌として美味しい。 毎年販売と同時に飲みたい真夏の貴公子。 ほとんどの生産者は手摘み収穫多くのワイン生産国では、人件費が高いため、ブドウの手摘みは高級ワインでのみ行われます。 しかしチリの場合、ほとんどのブドウが手で摘まれています。良質なワイン作りには良質なブドウの確保が必要なのですが、土でも虫でも不良果実でもなんでもかんでも "収穫"してしまう機械収穫機よりも、丁寧に人の手によって収穫することは良質なワイン作りには欠かせません。 事実チリでは2003年時点で、機械収穫機は数台しか存在せず、したがって、機械摘みということ自体がめずらしく、 機械をリースして収穫するほうがコストが高いという現実がありました。チリの手摘みは当たり前であり、 この点でも世界のほかのワイン生産国に比べて、生産コストを抑えて品質の高さを維持できる理由でもあります。 手摘みはこれに特化した移動性季節労働者が、収穫時にブドウの房を選定しながら収穫するため、 醸造場に入る前の畑ですでに一回、人間の目による健康果の選定が行われているのです。 なお、この収穫のためにたくさんの労働者が雇われており、北部から南部へ移動する収穫前線と一緒に、 こうした労働者は畑から隣の畑へと収穫を行いながら、ハーベストを追いかけて大移動を行います。 エコ、省エネに加え雇用創出まで、良いサイクルで回るブドウの手摘みは、農業の基本と言えます。 オーガニック天国チリ チリは実はオーガニック栽培の天国です。オーガニックワイン作りは、 オーガニックブドウ栽培のことを基本的にさしています。ブドウはそもそも、樹盛の強い木であり、したがって、 やせた土地でも元気良く育ち、化学肥料を使うような必要性はありませんし、チリの夏はとても乾燥しているため、 収穫に近いころに、湿度によるカビや菌による汚染を防ぐ防腐剤も必要としない、とても、 衛生的なブドウ栽培ができる場所なのです。また世界中で恐れられているブドウの根につく寄生虫フィロキセラが チリには存在しないことから、自根栽培が基本だということも特筆できます。フィロクセラの害虫被害に合った 世界中のワイン生産国では接木栽培が一般的で、100%純粋な品種からワインを造るのはなかなか難しいのが現状です。 さて、チリではもともとほぼオーガニック栽培をしていた生産者たちですが、近年までオーガニック栽培の認証を受けるという 概念が存在していませんでした。しかし現在では、国際的なオーガニック栽培の認証を受けるために、 より厳格な栽培管理を行い、世界基準の認証を受けられるオーガニック栽培に切り替え、 自然のエネルギーを最大限に活用するビオデナミ農法を採用する生産者も現れております。 ワイン関連外資がひしめく可能性の地 チリはワイン生産における世界でももっともポテンシャルの高い国であるということが、 多数のワイン関連外資や酒類界のチリへの進出によって確認できます。こんなに多くの有名なワイン関連外資が集中する ニューワールドのワイン生産国は他にありません。 フランス・ボルドー: ラフィット・ロートシルト: Los Bascos ムートン・ロートシルト: Escudo Rojo, Almaviva ジャック&フランソワ・リュルトン: JF Lurton ダッソー: Altair ボンタリエ: Aquitania フランス・ブルゴーニュ: ミシェルラロッシュ: Laroche Chile Rio Azul ボワセ: Veranda ウィリアム・フェーブル: William Febre その他フランス: ティエリ・ヴィラール: Villard シャトー・デ・ラローズ: Casas del Toqui スペイン: ミゲルトーレス: Miguel Torres ボデガス イ ベビダス: Selentia イタリア: アンティノリ: Haras de Pirque チンザノ: Reserva de Caliboro カリフォルニア: ロバート・モンダヴィ: Sena, Caliterra コンステレーション・グループ: Veramonte ケンダール・ジャクソン: Calina ガロ: Bisquertt オーストラリア ミルダラ・ブラス: Dallas conte リキュール: マスネ: Los Boldos ラポストル: Casa Lapostolle フィロキセラ被害の無かった国 19世紀半ばにヨーロッパの産地にフィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)という 害虫が大量発生しました。フィロキセラはブドウの木の根を食べるアブラムシの一種ですが、 ヨーロッパ系の品種はこの害虫に耐性が無かったため、フランスを含め当時のヨーロッパの主要産地はほぼ全滅という 状況にまで追い込まれてしまいました。フィロキセラ対策は、アメリカ大陸産のブドウ樹に耐性がある事が判り、 接ぎ木をすることで対応できました。しかし、その間、自国で職を失った専門家の多くが、まだフィロキセラの被害に みまわれていない新大陸の産地へと渡ったのです。 特にチリは地形的に孤立しているため害虫の侵入を受けにくく、 現在に至るまでフィロキセラの被害に遭っていない世界でも唯一の国となっています。フィロキセラ後のヨーロッパでは 耐性のあるアメリカ系品種の台木にヨーロッパ系品種を接木するという方法が一般的となりましたが、 フィロキセラ以前に苗木が持ち込まれたチリでは、今でもヨーロッパ系品種のブドウが自根で栽培されています。 また近年では、故郷フランスではすでに全滅してしまったカルメネールという品種がチリ中央部の産地で発見されました。 150年前にヨーロッパで消え去った品種が現在も自分の根で生き延びているチリは、 いわば聖域のような非常に貴重な産地であると言えるでしょう。 チリの新しい時代 1990年代以降、 チリワインは年々海外市場でのシェアを拡大し、2002年には、輸出額が6億ドルを超え、 輸出先国も90ヵ国以上と目覚ましい成長を遂げました。わずか10数年で、ワインはチリを代表する輸出品のひとつにまで 上り詰めたということになります。特に近年では比較的安価なテーブル・ワインのみでなく、 国際的なワインコンクールで高く評価されるようなプレミアム・ワインの生産にも力が入れられており、 毎年のように新たな試みが生まれています。 日本でも1997-98年のブーム以来輸入量は急増しており、 フランス、イタリア、アメリカに次いで第四位(2006年財務省関税局統計)となっています。